文芸社

2012年04月28日

第7章 蜜蜂の日記

※3月18日 計画

どんなに脱獄不可能な牢獄であろうと私の手に掛かれば造作も無い事だ。フハハ。
この屋敷の見取り図は頭に叩きこまれている。我が家だしね。入れ墨む必要も無い。
そしてそこに住む住人の時間帯による行動パターンも把握済み。
あとは……実行に移すだけ。なんかテンション上がっちゃって書いちゃったけど、この
内容、後日見たら絶対に後悔する。あ、この日記帳はここに残していく訳にはいかない
わね。

※4月1日 プリズンブレイク

行動を起こし、しばらくしてから心配になってくる。
書置き的にはあれってアウトなのかしら?大丈夫よね?
≪今日は学校が終わってから寄る所があるので、少し遅くなります。(ニッポン)≫
ちゃんと目的地は書いてあるし(最初は書くつもりは無かったので( )扱い)
部屋から玄関までのセキュリティは……確かに違法な手段で掻い潜ったけど、
シークレットサービスの何人かは倒しちゃったけど、多少の犠牲は止むを得ないわ。
そもそもセキュリティって外敵からの侵入を拒むもの。家の住人を縛り付けるものでは
無いはず。あ、ママには内緒でもお手伝いのミニーや、ゼノヴィアには言っておいた方
が良かったかな? 結果オーライよ。
兎に角私は専用の旅客機を経由して日本に潜入成功。入国しています。
久しぶりの日本の街並みは……相変わらず統一感の無い不揃いな印象を受けるけど、な
ぜか暖かい印象を受ける。昔出掛けた韓国や台湾、他のアジアの国とはまた違った空気
感がある。それは恐らくそこに暮らす人々の人柄から滲み出たものなんだろうと思う。
さすがワサビの国だ。ん?ワラビ?ワビサビ? さてと、私の目的は2つある。
1つ目はパパに久しぶりに会う為。2つ目は……。

※4月10日 思いのほか

トントン拍子で事は運ぶ。さすがパパ。
なんだかんだで彼の居る高校に正式(?)に入学する事が出来た。
彼の無事も確認出来た。涙が出そうになった。けど我慢。
彼が私の事をどう思っているかなんて解らない。
もしかしたら私の事なんて覚えていないのかも知れない。
それに私が……近付くと彼に悪い影響が出るかも知れない。
あの後、彼はどういう人生を送ったのだろ。
周りの人間は?警察は?彼にどういう判断を下したのだろ。
何も知らない。解らない。

けど、今日の彼の雰囲気を視る限り、大丈夫そうだ。
大丈夫、きっと大丈夫。ろっくんは何も悪く無い。
悪いのはあの男と……

それにしても、事態があまり大事にならないうちに本国に帰るつもりだったけど、どこ
か違和感。家出娘こと私に対してパパが妙に寛容だ。
パパと久しぶりに会ったら、なんだか数年前と比べて元気が無いみたい。
仕事も、タクシーの運転手になっていてびっくり。
拘束時間も長いらしく、その性で家でもなかなか会えない。寂しいな。

それはそうと、早く私の高校の制服届かないのかな?
日本の制服はやはりキュート、プリティカルヒットあるよ!

今日は転校初日、クラスメイトは少し大人しい感じはするけど、雰囲気がいいクラスで
良かった。私、やっぱり浮いているのかな?おかしいな、日本に来るとどうしても私は
浮いてしまうようだ。いや、英国でもなんだか特別扱いはされていたけど。

タミヤという委員長?さんは口調は厳しいけど、ジャパニーズビューティー、綺麗な人
だった。口調は厳しいけど。多分、真っ直ぐで優しい人。クラス名簿もわざわざ作って
渡してくれたしね。担任の荒川先生は、なんだか適当な気がする。
7年経った今、ろっくんの横には私では無くて違う女の子が横に居る。
本来ならそこは私の居場所であったはずなのに……あぁ、ダメ、こんな事を書いたら余
計に悲しくなるわ。いいの、彼がそれで幸せなら。……あ、いけないわ、ついつい長く
なってしまった。

日記帳の今日の日付の枠を飛び出して2日分書いてしまった。
しばらく日記はお預けね。おやすみなさい。

※4月20日 教室がメチャクチャに!

登校したら、教室が荒らされていた。
あの黒板に書かれていたメッセージは恐らく私に宛てられてものだ。

ろっくんは何も気付いていないようだった。
よかったそれだけ解れば十分。
あぁ、ダメ、動悸が激しくなる。
無い無い有り得ない、あいつが私を追いかけてくるなんて出来ないはず。
なら誰?誰がしたの?私の事を天使と呼び、浄化をするように迫って来た事実を知るの
は一部の人間だけ。あの件は英国が関与し、情報統制が図られたはず、有り得ない。
ダメ、ダメ、ダメ、あの事件の真実が暴かれる事はあってはいけない。
なんの為の私の7年間だったの?憎い、あいつが憎い。本来なら彼と平穏に過ごす事の
出来た日本での7年間を奪った奴が憎い。なんとしても犯人を……あいつを探し出さな
いと。ろっくんの為にも。

※4月22日 夜

学校に忍び込むと先客が居た。
なんで?なんで……彼女が教室にいるの?
私は何か彼女に聞かれた気もしたけど、その場から逃げ出した。
彼女の他に違う大人も居た。呼び止められたけど構うもんか。
あなたも逃げて?彼に殺されてしまうわよ?
違う、彼女は違う、私の知っている彼女はあいつに殺された。
首を絞められ、あいつに腹を切り裂かれ、内臓を……!
あぁ、ダメだ。あいつはやっぱり私の事を追い詰め、殺そうとするのだ。怖い、憎い。
私から奪った7年間とこの先にある私の未来をも残らず搾取する為に姿を現したんだ。
私は勝ち取ったはずでは無かったの?死の淵から私の未来を。
させない、そんな事はさせない、させない。絶対に!

※5月6日 最近

記憶が曖昧だ。誰かが、何かが私の中に居る。
あいつとは違う、新しい誰かだ。

最近体に力が入らない。

やめて、嫌、みんな私に近付かないで?
私はあいつを抑え込むのに必死なの。だからお願い、皆近付かないで!

※5月15日 気が付くと

目の前にはたくさんの人が倒れている事がある。誰がやったの?
知らない振りはいけない。これを全てやったのは私だ。

あの子と私の記憶は全て共有されている。
あの子は私を守ろうとしてくれているのだ。
それだけ、それだけなの。だから彼女に罪は無いの。
あるのは私にだけ。誰かが私を殺そうとしている。
教室を荒らした人間が恐らく犯人だ、一体誰?
男?女?何言ってるの?北白は男、なんだ、殺せばいいのよ!
男全員、ろっくん以外のね!!

※5月20日 てへぺろ?

あぁ、もう死にたい。最悪だ。
絶対に嫌われた。きっとそのうちゴリラ女とか言われるんだわ。
あぁ、最悪。何が最悪って、つい反射的に手に握られていたトンファーで
彼を気絶させてしまったから。しかも私が。絶対に嫌われた。

泣きたい、っていうより、帰って来てから1人で泣いた。

でも保健室でろっくんのおでこに触っちゃった。傷跡はやっぱり残ってた。
早く、早く犯人を見つけないと、彼までもしかしたら殺されてしまうかも知れない。
急がないと。

posted by 管理人哀原 なつき at 17:39| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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